2007年03月20日(火)[荒井秀樹]
井口深雪の勇気に乾杯!
少しの間だけど、井口深雪にサヨナラを言う時がきた。
ご主人の井口さんについて僕はあまり知らないけど、アメリカで医学の勉強をしており、将来、活躍してくれるに違いないという。そんなとても凄い人なのだ。
その彼と、深雪は二人で家庭を築くことを決意した。アメリカのアイオワで。
僕らは、ワールドカップのカナダ大会の最終日、ささやかな宴を開いた。
深雪の世界ランキング優勝のクリスターカップを飾りながら、深雪の優勝と引退を祝った。
太田渉子ら女子チームは、そんな深雪のために替え歌を作ってくれた。
みんなに歌詞カードを配り、全員で歌った。
最初は、おかしく面白く、みんな笑って歌った・・・
でも段々最後、終わりに近づくと、みんな泣いていた。
もう、深雪と一緒にスキーができないと思うと、
みんな悲しかった。
深雪は、そんな僕らの気持ちを知って、ずーと泣いていた。
涙もろい僕とちがい、あまり人前で泣かない深雪だったが、
今日は泣いていた。
そんな深雪をみて、僕は思った。
人間にとって、困難はいっぱいあるけど、
やっぱり、勇気がないとだめなのだ。
挑戦する気持ち、負けない気持ち、そして勝つんだという執念!
その勇気こそ、今の世の中、とても大切だと教えてもらった。
深雪の恩師、現在長野県、飯島中学校先生で、日本チームのスタッフでもある渡辺孝次先生の言葉を思い出す。
先生はどんな生徒にも話すそうだ。「あきらめるな!チャンスはある。どんな人でも、誰にも可能性はある」と。
そんな生き方を、深雪はしてきたのだろう。
だから、みんなに感動を与えるし、勇気をもらえるのだ。
僕は、表彰式の後、深雪に注文をした。
いままでもいっぱい言ってきたけど・・・
僕はいい写真を撮りたくて、
「その優勝トロフィーにキスをして」と、
最後の僕のわがままだった。
深雪は笑いながら恥ずかしそうにキスをしてくれた。
深雪の、本当に幸せそうな横顔をみせてくれた・・。
バイアスロン世界チャンピオンの井口深雪に、僕は心から「おめでとう」の言葉を贈った。
「深雪、よかったね!おめでとう!」