
2006年12月08日(金)[荒井秀樹]
初雪の便りが届くころ
僕にうれしいメールが届いた。
デフリンピック代表で聴覚障害の尾形さんからの問い合わせだ。
「僕の友達は、脊損の障害ですが、シットスキーはできますか?」「39歳で岩手県に住む友人を誘ってみたい」と声をかけてくれているようだ。
三重県の青年からも、岐阜に住む方からも。
最近、僕のもとへ、こんなうれしいメールが届いてくる。みんな、「シットスキーやクロカンを体験したい」「パラに挑戦したい」と意欲的だ。
僕は、そんな、みんなが楽しく、冬の大自然を満喫しながら汗をかき、自分の力だけで前に進むクロスカントリースキーの魅力にふれて、もっと沢山の人達に「クロカン、大好き」な愛好家になってもらいたい。
札幌に住む長田は21歳の時、交通事故で車椅子の生活になった。
以前に奥さんから、こんな話を聞いた。
「冬の便りが届くと、いつもいやな顔していたんですよ・・・」
なぜなら北海道の冬は長く、雪が積もった道路は車椅子には、とても不便なのだと言う。
でも奥さんは、笑顔で教えてくれた。
「シットスキーに出会ってから、初雪が恋しそうに、いつも、早く積もらないかな~って窓から外を眺めているんですよ・・」
あまり多くを語らない長田も笑って聞いていた。
「嫌だ、嫌だ」と言っていた冬が、スポーツを始めて、クロカン選手になってから、待ちどおしくなったと言う。
なんて素敵なことなんだろう。
長田が初めてシットスキーに乗ったのは、長野パラリンピックの2年前の96年に札幌の滝野で行われた合宿だった。
ノルウェーから取り寄せたシットスキーでなかなか前に進めず、勝手のちがうシットスキーにみんな困惑していたのを思い出す。
あれから、もう10年・・・・
いやまだ、長田は10回しか、初雪にワクワクした少年のような気分を味わっていないのだ。
そう考えてみたら、長田は、これからが本番で、もっともっと違う初雪の素晴らしさを体験してほしいと思う。
肩の故障から、復活にかける長田の心意気を感じる。
僕が中学時代に出会ったクロカンが、こんなにも人を変え、人に役立っているとは思っても見なかった。
そして、シットスキーヤーの先輩たちに、全国から来る問い合わせを、初雪の便りと共に伝えたい。
そんな想いがとても強いのだ。