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世界の頂点をめざし、パラスポーツの裾野を広げたい!日立ソリューションズ「チームAUROEA(アウローラ)」の選手・監督が、日常の素顔から大会日記までをお届けします。

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日立ソリューションズ「チームAUROEA(アウローラ)」の選手・監督が、
日常の素顔から大会日記までをお届けします。

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すべてフルオーダー!世界に一つだけのレーサー

長:今日は実際に競技で使っている車いすを持ってきてもらっています。

岸澤選手

これが競技用として僕たちが使用している「レーサー」という車いすです。見ての通り、だいぶ車体自体が長くて、後輪が二つ、前輪が一つという構成の三輪です。
ほとんど全てフルオーダーで、選手一人ひとりに合わせた形で1台ずつ作られているので、形や乗る位置が変わります。選手の動きだけではなく、車いすと一体になった時の動きが競技結果に繋がります。

レーサーを説明する岸澤選手
(レーサーを説明する岸澤選手)
久保選手

我々は陸上競技場で走るトラックの種目なので、トラックレバーというものを使います。これを左にたたくとコーナーに沿った角度に前輪が入ってくれるんですね。直線に入ったときに、この右側を叩くとセンターに戻るっていう仕組みです。
レーサーにはギアが付いていないので、ハンドリムという部分を叩くようにして漕ぎます。ハンドリムのサイズは、手の長さや体型に合わせて決めます。

レーサーの操作を開設する久保選手
(レーサーの操作を解説する久保選手(左))

◎手は大丈夫?

筑摩:タイヤを回すときに指が痛くなったりしませんか?

さっきハンドリムを回すと言いましたが、素手で回しているわけではなくて、グローブでハンドリムを叩いて速度を生み出しているため、掴んでるわけではありません。手の痛みはそんなにないです。

車輪についているハンドリムを叩いて速度を生み出します
(車輪についているハンドリムを叩いて速度を生み出します)

◎タイヤの使い分けもキーポイント

長:走る場所によってタイヤを変えたりするんですか?

変える選手もいれば、変えない選手もいます。トラック競技だと地面がゴム質でできているので場所によって硬さが全然違いますし、そうすると、タイヤの回転の重さや摩擦抵抗も変わります。ロードの場合、例えばアスファルトだったら、パンクのリスクが高くなるのでパンクしづらい太めのタイヤに変えたりと、みんなで考えながら決めています。

 

◎重そうに見えるけど・・・

筑摩:ちなみに、レーサーの総重量は何キロぐらいですか。

車体自体は9キロとか10キロを切るぐらいの軽さです。

見た目すごく重そうに見えるんですけれども、みんな持ってびっくりするんですよ。

 
教えて!レース中の戦略や裏話

筑摩:岸澤選手は11月に大分で開催された国際車いすマラソンに出場されました。テレビの映像があるので、実際にこちらのレーサーで走っている様子を見ながら、競技について解説いただきます。

◎スタート位置と作戦の重要性

これはちょうどスタート地点に並んだ時ですね。車いすレーサーは結構場所をとるので、前に出ようと思ってもなかなか出られないんです。なので、このスタート位置っていうのはすごく重要になってくるんです。
岸澤選手はまだフルマラソンの良いタイムを持っていなかったので、すごい後ろの7列目スタートだったんです。

大分国際車いすマラソンのスタート地点に並ぶ選手たちを画面越しに見つめる久保選手(左)と岸澤選手(右)
(大分国際車いすマラソンのスタート地点に並ぶ選手たちを画面越しに見つめる久保選手(左)と岸澤選手(右))

レースの約1ヶ月前にゼッケン番号が出たときに、岸澤選手からすぐに連絡が来て、どういった作戦でスタートしていったらいいかを考えました。7列目でしたが、運よく一番右端だったんです。岸澤選手はスタートの立ち上がりが早いので、「外側の隙間からもう一気に前に出ていってしまえ」という作戦で行きました。

これ!が7列目から脇をすり抜けて前に出る岸澤選手
(これ!が7列目から脇をすり抜けて前に出る岸澤選手)

時速30キロ以上で走る競技なので、人の後ろにつくと風よけになってかなり楽なんです。だいたい80%ぐらいの力で走れると言われています。

長:そんなに違うんですね。

なので、一列隊形に自然と変わっていくんです。

 

◎車いす陸上競技のレースにおけるかけ引き

ここが一発目の橋への上りですね。この大分のコースは、比較的走りやすいアップダウンがないコースです。なので、こういった橋のアップダウンが唯一の仕掛けどころだったり、集団がバラバラになるキーポイントになるので、こういったところで少しずつ集団形成されていきます。

一発目の橋への上り
(一発目の橋への上り)

筑摩:映像を見てても、結構スピードが出ていますよね。

原付やバイクに乗られる方は、時速30キロをよく体感しているかもしれませんが、僕らは生身で走っているのと、地面にとても近いので、速度感が倍くらいに感じるんです。
下り坂だと時速50~60キロになるので、体感はとても怖くて、ブレーキをかけてしまう選手もいれば、逆にそこで攻める選手もいたりするところで、大きな差が出たりもします。

 

「車いす陸上競技を知る、楽しむ、応援する!」メニュー
1. 久保選手と岸澤選手ってどんな人?
2. 競技用車いす「レーサー」って何がすごいの?
3. レースの裏話あれこれ
4. モチベーションを高く維持するコツは?