さらに深堀り!車いす陸上の走りとは?
◎レーサーを漕ぐ姿勢はつらくない?
筑摩:ずっと前かがみの姿勢がきつそうだなと思ったんですが、背中を特別に鍛えたりしてるんですか。
実は今だから言えるんですが、去年の大分マラソンはぎっくり腰で出場できなかったんです。
長:そうだったんですか。
背中や腰には大きな負担がかかります。
普通に生活していたら、まず絶対しないような姿勢ですからね。土下座してずっとごめんなさいしているような。
◎車いす陸上競技でも得意、不得意はある?
筑摩:健常者の陸上でも、短距離向きの人と長距離向きの人がいると思うんですが、車いす陸上競技でもそういった向き不向きってあったりするんですか。
明確にあります。測定したらもう一発で出ます。私は長距離向きで、逆が岸澤選手。
僕たちはまったく正反対なんです。
筑摩:そうなんですか!
競技の特性的には、やっぱり一瞬でスピードを出し切れる方が絶対にいいんですよね。結局、かけ引きやラストのスプリント勝負になったときは、瞬発力がある選手の方が絶対に強い。持久力は誰でも練習すればつくものなので。
最初私が彼に惹かれたのは、まだ競技を始めたての頃に走っているのを見たときです。もちろん漕ぎ方もめちゃくちゃなんですよ。めちゃくちゃなのに、めちゃくちゃなスピードで走るんですよ。なので、この競技の特性を覚えればすごい楽しみな選手だなって思って。すごくインプットされたというか、そこからずっと口説いていったんです。
それで、まあ、しゃあないな~って。(爆笑)
◎走る時のコース取りについて
筑摩:トラックでは左回りに走るのが決まっているかと思いますが、ロードでは右折もありますよね。右折がキーポイントになったりしますか。
大分のコースでも結構Uターンがあるんですけど、Uターン自体はもう速度が完全に落ちてしまうので、そこから立ち上げてスピードを出す力がないと、集団から切れてしまいます。マラソンの中でも一つの大きなポイントになります。
長:今、カーブの話があったけど、利き腕って関係あるんですか。それとも練習の仕方で変わってくるとかありますか。
利き腕とかはあまりないですかね。でもコースによって走り方が変わります。日本は比較的走りやすくて、長い直線でコースのレイアウトを作ってくれますが、海外だと住宅街を走ることもあるので、とにかく忙しいですね。ちょっと走っては曲がって、ちょっと走っては曲がってという、テクニカルなコース。
◎レース中のハプニング!
日本は道路が綺麗なのでパンクのリスクが少ないですが、海外だと石畳のコースもあるし、マンホールの穴が空いたままのコースも普通にあるんです。以前、マンホールに落ちちゃって、パンクしてリタイヤする選手も見ました。
長:パンクしちゃったらもうリタイヤしかない?修理して再スタートできますか?
レーサーに予備のタイヤと小さい空気ボンベを積んでおくことで、パンクを一瞬で修理する技術もあります。海外の危ないコースだったら積んでいくこともありますね。
ちなみに、私は16年かかって、ようやくリオでのマラソンに出場しました。ようやく憧れの舞台で走れる、ってなったときに、3キロ地点でパンクしてしまったんです!
普段の国内大会だったらそこでリタイヤしてたんでしょうけど、リタイヤしてしまうと結果が残らないので、これは何としても自分で履き替えて完走しようと思って、積んでいた予備のタイヤで修理して完走したんです。