2008年12月12日(金)[荒井秀樹]
午後の練習、外は真っ暗。そして渉子に思う
太陽が、顔を出さないフィンランドの冬。
オーロラを観るために訪れる観光客やトレーニングに汗を流すスキー選手にとっては、
この暗さも一時的なものだからあきらめがつく。
でも、ここに住むとなると、話は別だ。
午後の練習は、どうしても気が重いし、やる気が半減してしまうようだ。
そんなことを考えると、
ここに留学して3年目の太田渉子は本当によく頑張っていると感心する。
山形のお父さんは、
「うちの娘は、ノホホ~ン娘で・・」と笑う。
でも、15歳で単身一人で渡り、日本人もいないし、日本語をしゃべれる人もいない。
ホームスティ先もなく、寮に住み、
話せないフィンランド語や英語の中で、
自炊から学校の授業、身の回りのこと、そしてトレーニングと、すべて一人でこなしてきた。
何回かホームシックや精神的に落ち込んだという。
でも、「目標は、バンクーバーだから」と話す渉子。
それを聞いた長田や久保、そして新田。
「おれたちも、頑張らないと」と心に誓ったに違いない。
(スキーで負荷をかけてからの初弾撃ち練習)
その日の午後の練習。
やはり外は、まだ2時なのに真っ暗。
ロシアチームのメタルターゲットを借りて、
初弾撃ちの練習をした。
心拍を160以上にして、
新田は12秒。
久保は15秒。
長田は20秒。
タイムを決めて、初弾を撃っていく練習だ。
長田はどうしても障害が重いし、時間がかかってしまう。
これから、どんどんタイムを短くしていく。
(新田選手の伏せ撃ち姿勢)
(ロシアのメタルターゲットを借りる)
そして、エアライフルに弾をこめる作業がある。
5連発の弾倉に4.5mmのAR弾を素手で、
器用に指先を使いながら弾を入れていく。
この作業は、監督やコーチの役目だ。
寒さで指先の感覚がなくなっていく。
(エアライフルの弾、カートリッジに詰める)
一つの目標に向かって、
全員で作業をしていくチームに、
選手も気合いが入るし、この暗さなんか吹き飛ばす力が湧いてくる。
(満射を連発し気持ちよく練習を終わる長田選手)
練習の終わり、
「いい練習ができました」と、長田は必ず感謝の言葉をかけていく。
監督やコーチが、ほっとする瞬間だ。
もちろん若い新田や久保、太田も
感謝を忘れない。
チームは、そんな感謝の心で成り立っている。
(夜は筋トレに励む久保選手)
(ワックスは毎日の日課)
長くてあっという間の一日が終わる。
選手たちが、ベットの中でみる夢、
きっと、渉子と同じバンクーバーの夢なのかもしれない。
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